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8月, 2012の投稿を表示しています

夏休み

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  「大学の先生の夏休みは長いのでしょう」と訊かれるが、夏季休業は3日間である。8月前半には期末試験、9月には集中講義や実習があり、学生の休みも以前より短い。授業がびっしりある期間には、遠方へ野外調査に行ったり数十工程ある複雑な実験をしたりできない。やるなら今だ。森の中で試料やデータを集め、実験室に帰って遺伝子や細胞の分析をする。静かな好奇心と平板な緊張感が続き、達成感と非達成感が半々。その繰り返しである。研究対象と一対一で対峙して考えたいがために、これまで人と一緒に調査に行くことは滅多に無かった。鹿児島環境学プロジェクトに関わるようになって、様々な立場の人と現場に入る機会を持った。興味の対象は人それぞれで、同じ道を歩いていても視線の方向が違う。職業も年齢も多様な人達と山に入ると、これまで目を向けなかった類の自然現象や生き物の存在に気づかされる。まれに、休暇や連休を組み合わせて本州の高い山へ行く。この時だけは調査活動を自ら禁じて、ただ歩く。ン十年前の自分の山行記録と比較して、心身の老化を直視するための年中行事なのだが、なぜか毎度、天気が悪い。最近は,年1回ですら休暇の日程確保が難しい。と、書いたところでスケジュール表を見た。あ、空白域がある。しばらく研究室から消えます。                                宮本 旬子 2012.8.30 奄美大島の渓流(2012年7月) 霧島の韓国岳中腹から大浪池(2012年8月) 中部山岳国立公園の穂高岳連峰(2010年9月)

札幌すすきので旨い寿司にめぐりあった。

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  夫婦二人、札幌の二日目(8月3日)は気温22度の夕暮れ時、大通公園のベンチで少し時を過ごした後、すすきの交差点に出た。そして、たまたま目にした看板を頼りに雑居ビル3Fの寿司屋へ。カウンター1本10人規模の店。一元客はあまり入れないが、キャンセルがあった直後で、しかも鹿児島からと聞いて入れてくれた。店には鹿児島の、いわゆる幻系?の芋焼酎が並べられていた。川辺の「八幡」があり驚いたが経営者が酒屋と聞いて納得した。  まず、ホッケ、〈魚に花〉と書く。海の表層に群れる幼魚が美しい青緑色をしていて花のようだから。醤油ダレで鮮度の良さを味わった。ニシンは別名春告魚(はるつげうお)。骨が多く手間がかかる。岩塩で、淡白だが脂の旨みが残った。ボタンエビは水深100〜400メートルに生息。産卵期は北海道日本海側で4月〜6月。寿司は炙り、岩塩で。ホタテは今更説明はいらない。甘味を持つグリシンが多い、寿司は炙りで醤油ダレ。大トロは影が薄くなった。毛ガニはズワイやタラバに比べると小さく可食部も少ないが身に甘みがある。炙りを大胆に握ってあった。キンメ(金目鯛)は意外に感じたが、北海道以南の太平洋の水深200m以上の深海に棲息。下ごしらえが見事で醤油ダレ(私は2貫食べた)。  マスコは一般的には樺太マスの筋子のことらしいが、サクラマス、ニジマスなどの筋子を総称することもあるという。何のマスか聞き逃したが、大きさはイクラの半分、小粒であった。小鉢に盛ったシャリにマスコとワサビを合わせて何も付けずに食べた。味は濃厚で上品な味。  ウニは利尻のバフン。利尻コンブを餌にしているから美味らしい。軍艦ではなく大胆に握りで、そのままいけた。味は濃厚、本物だ。アナゴは最も意外だった。北海道以南から東シナ海まで分布する。関東風で焼き、味はあっさりした仕上げになっていた。とても美味。  結局、最後まで一度も醤油を付けることなく「おまかせ」を平らげた。素材の味を生かした「こしらえ」が土地を感じさせた。  会話をしながらゆっくり食事をすることは日常生活ではあまりなくなった。今回の旅で久し振りに食事の楽しさを味わった。今や、それは見知らぬ土地でしか成立しない時間なのかも知れない。また、旅に出よう。同伴者は必ずしも決まっていないが・・ 岩田治郎 2012.8.21

海に広がる天空

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 鹿児島は南北に島々が広がるため、亜熱帯から温帯への移行帯に位置している。また、黒潮が熱帯から島々に平行しながら南から北に流れているため、様々な海洋生物を観察することができる。  私はその中で熱帯を中心に生息する巻貝ウミウサギガイの生態について薩摩半島南部で研究を行っている。この貝の貝殻は真っ白でとても美しいため、熱帯の太平洋島嶼に生活する人々にとって、首飾りや色々な装束品、そして伝統的な儀式においてとても重要な役割を果たしている。一方、この貝の生きている姿はあまり見かけることはないが、真っ黒な外套膜というマントを身にまとってソフトコーラル群集の中を移動している。この真っ黒なマントには真っ白な星空のような模様が広がり、黒と白のコントラストは海の中に天空が広がるように美しい。  鹿児島の海は様々な生物が生息しており、海の中にいると美しく楽しい。今後もこの美しい世界が見られることを願いたい。 河合渓 2012.8.16 白と黒の模様が見られる外套膜に覆われたウミウサギガイ