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ルノワールの時代と地球温暖化

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ルノワールの時代展(名古屋ボストン美術館)     先日、たまたま泊まったホテルの向かいに名古屋ボストン美術館があった。「ルノワール の時代-近代ヨーロッパの光と影-」展をやっていた。目玉の作品はルノワールの「ブージヴァルのダンス」(1883)である。パンフレットには「ルノワールが生きた19世紀後半から20世紀初頭のヨーロッパは、産業革命により近代化が進んだ時代であり、人々の生活は劇的に変わりました。ガス灯が輝く通り、華やかな舞台の劇場-街は都市へと変貌し刺激的な場所となります。しかし急激な人口増加に見舞われた都市では生活環境が悪化し、貧富の差が生まれました。人々は都市に息苦しさを感じる一方、自然や素朴な暮らしの残る田舎にピクニックや海水浴などの憩いを求めるようになります。」とあった。ドガ、セザンヌ、モネ、ルノワールは、いずれも1840年前後に生まれ、近代化が急激に進む中、1870年代~1900年代初頭に活躍している。印象派の画家たちだ。  地球温暖化の話は、常に産業革命すなわち石炭(化石燃料)の燃焼が始まったことが起点になる。昨年公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次報告によると産業革命(1880年)から2012年の132年間に、世界の地表面の年平均気温は0.85℃上昇している。ちなみに、日本はこの100年間で1.14℃上昇している。ルノワールが活躍した20世紀前期の気温上昇は大きい。皮肉にも、中期の世界大戦の時期は停滞するが、平和が戻り産業活動などが活発になる20世紀後期から今世紀にかけて気温上昇が顕著になった。 世界の気候の変化(IPCC)  昨年12月、パリで気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が開催され、アメリカや中国を含むすべての国々が参加して産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えることを共通の目標とする「パリ協定」が締結された。世界が低炭素社会の構築に向け、京都議定書(1997)の時代からパリ協定(2015)の時代に移る歴史的転換点となった。今世紀末に温室効果ガス排出ゼロを目指すための社会構造イノベーションも提言されている。低炭素化への劇的変化に呼応して、またパリから新たな文化芸術が生まれ、第2のルノワールやセザンヌが生まれないだろうか。  一般社団法人地球温暖化防止全国ネット専務理事 岩田治郎  2016.8.9