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黒と碧

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 学生時代は北の海で研究をしていた。真冬の海水温は0℃近く、雪の降りしきる真夜中に波の当たる岩礁での貝の調査は過酷だが貴重な経験だった。そんな調査中に頭に流れてくるのは、演歌であり、みんなと歌った校歌や寮歌、そして水産放浪歌。時代もあると思うが、あの寒風吹きすさぶ、漆黒の波間に似合うのはゆっくりとした暗めの曲だった。    鹿児島に赴任してすぐに任されたのはトカラについて記事を書くという仕事だった。何も分からずにフェリーに乗り、トカラの島々を回った。2月だが南下するほどに暖かくなる。そして、宝島、小宝島でフェリーからみた海の碧さには感激した。真冬なのに暖かで気持ちを高揚させるあの碧さは、いまでも目に浮かぶ。この碧さに北の海の歌は似合わない。やはり、島唄であり、ジャンベのリズムだ。  鹿児島に赴任して12年。頭の中では南国ジャマイカ発祥のレゲエのリズムがすぐ思い浮かぶようになった。天気の良い今日は、ボブマーリーのI Shot the Sheriffの気分だ。 河合渓 2013.2.20 鹿児島の海

第二種接近遭遇

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  先週のこと。ある人から「あなたはこれまで何種類の生き物を見ましたか?」と質問された。学生時代には新たに野生生物に出会うたびに記録していたが,最近はカウントを怠り,正確な数がわからない。少々気になって,夜中にごそごそと図鑑を繰る。日本国内に限定すると,野生哺乳類の種と亜種を合わせて,67種類。ノイヌとノヤギとノネコを加えると70種類に出会っていた。次は野鳥。1985年の野帳には計110種類という記述があった。その後に114種類を見たので,計224種類。さらに爬虫類は37種類,両生類21種類という結果になった。そういえば,潜りに行かなくなってから魚や海産無脊椎動物への関心が薄れ,昆虫を捕まえて和名を調べようという元気がなくなり,いずれも膨大な種数がいるはずなのに,最近はきちんと記録していない。海外でもいろいろな生き物に出会っているが,その地域の専門的な図鑑が手に入らず,鑑別同定に自信がもてない場合もある。それでもざっと見積もると,専門である植物に加えて,動物,菌類,原生生物など,これまでに出会った生物はおよそ10000種類にのぼりそうだ。   鹿児島市内でも野生生物との遭遇は意外と日常的である。先日は県庁前の海をイルカがパレードしていた。種類は判別できなかったが,某会議さえなければ,そのまま見ていたい光景だった。住宅街でもタヌキやイノシシは珍しくないが,空港へ行くために明け方に車を出そうとしたら,道路脇の薮からアナグマが出て来てクネクネと横切っていく。別の日には,海沿いの道路で前の車が次々に急ブレーキをかけ,大事故寸前。ミサゴが数台前の車のフロントガラスに魚を落としたことが原因だった。日曜日の20時台,某TV番組から流れるフクロウの声の効果音に対抗して,本物が窓の外を鳴きながら飛び,三色の毛でできたペレットを落としていく。まさかと思うが,小猫の毛のように見える。某大規模商業施設の照明塔周辺には冬期にハクセキレイの集団ねぐらができる。渡りのシーズンには住宅地の上にサシバの鷹柱ができる。自宅前の電線にヒレンジャクの群が飛来した年もあった。昨秋,自宅の玄関前で全長1.3mのシマヘビの完璧な抜け殻を拾った。そういえば,庭を走り回っていたトカゲやヤモリが一匹もいない。満腹して,1着,脱いだようだ。   生物多様性を云々するとき,自然度が高い森林や希少種に注目が集まるが,いつも