海に広がる天空

 鹿児島は南北に島々が広がるため、亜熱帯から温帯への移行帯に位置している。また、黒潮が熱帯から島々に平行しながら南から北に流れているため、様々な海洋生物を観察することができる。

 私はその中で熱帯を中心に生息する巻貝ウミウサギガイの生態について薩摩半島南部で研究を行っている。この貝の貝殻は真っ白でとても美しいため、熱帯の太平洋島嶼に生活する人々にとって、首飾りや色々な装束品、そして伝統的な儀式においてとても重要な役割を果たしている。一方、この貝の生きている姿はあまり見かけることはないが、真っ黒な外套膜というマントを身にまとってソフトコーラル群集の中を移動している。この真っ黒なマントには真っ白な星空のような模様が広がり、黒と白のコントラストは海の中に天空が広がるように美しい。

 鹿児島の海は様々な生物が生息しており、海の中にいると美しく楽しい。今後もこの美しい世界が見られることを願いたい。

河合渓 2012.8.16

白と黒の模様が見られる外套膜に覆われたウミウサギガイ