札幌すすきので旨い寿司にめぐりあった。

  夫婦二人、札幌の二日目(8月3日)は気温22度の夕暮れ時、大通公園のベンチで少し時を過ごした後、すすきの交差点に出た。そして、たまたま目にした看板を頼りに雑居ビル3Fの寿司屋へ。カウンター1本10人規模の店。一元客はあまり入れないが、キャンセルがあった直後で、しかも鹿児島からと聞いて入れてくれた。店には鹿児島の、いわゆる幻系?の芋焼酎が並べられていた。川辺の「八幡」があり驚いたが経営者が酒屋と聞いて納得した。


 まず、ホッケ、〈魚に花〉と書く。海の表層に群れる幼魚が美しい青緑色をしていて花のようだから。醤油ダレで鮮度の良さを味わった。ニシンは別名春告魚(はるつげうお)。骨が多く手間がかかる。岩塩で、淡白だが脂の旨みが残った。ボタンエビは水深100〜400メートルに生息。産卵期は北海道日本海側で4月〜6月。寿司は炙り、岩塩で。ホタテは今更説明はいらない。甘味を持つグリシンが多い、寿司は炙りで醤油ダレ。大トロは影が薄くなった。毛ガニはズワイやタラバに比べると小さく可食部も少ないが身に甘みがある。炙りを大胆に握ってあった。キンメ(金目鯛)は意外に感じたが、北海道以南の太平洋の水深200m以上の深海に棲息。下ごしらえが見事で醤油ダレ(私は2貫食べた)。

 マスコは一般的には樺太マスの筋子のことらしいが、サクラマス、ニジマスなどの筋子を総称することもあるという。何のマスか聞き逃したが、大きさはイクラの半分、小粒であった。小鉢に盛ったシャリにマスコとワサビを合わせて何も付けずに食べた。味は濃厚で上品な味。



 ウニは利尻のバフン。利尻コンブを餌にしているから美味らしい。軍艦ではなく大胆に握りで、そのままいけた。味は濃厚、本物だ。アナゴは最も意外だった。北海道以南から東シナ海まで分布する。関東風で焼き、味はあっさりした仕上げになっていた。とても美味。  結局、最後まで一度も醤油を付けることなく「おまかせ」を平らげた。素材の味を生かした「こしらえ」が土地を感じさせた。  会話をしながらゆっくり食事をすることは日常生活ではあまりなくなった。今回の旅で久し振りに食事の楽しさを味わった。今や、それは見知らぬ土地でしか成立しない時間なのかも知れない。また、旅に出よう。同伴者は必ずしも決まっていないが・・

岩田治郎 2012.8.21