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風天の寅さん

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  「男はつらいよ」の主役は、言わずと知れた渥美清。フーテンの寅さんだ。彼は「風天」の号で俳句を詠んでいる。「風天 渥美清のうた」(大空出版、2008)は、彼の残した俳句を丹念に掘り起こし、「アエラ句会」など4句会で詠まれた231句を掲載している。 「お遍路が 一列に行く 虹の中」  66才の時の句で、風天俳句の代表作と言われている。彼の死後4年目の2000年に発行された講談社「カラー版新日本大歳時記」春の巻に、季語「遍路」の例句として、高浜虚子など名だたる俳人の句と並んで掲載されたとのこと。相当のことらしい。  この句の解説には、「遍路は四国八十八か所の霊場を巡行すること。弘法大師への深い信仰から出た行事で三月から五月中ごろまでつづく春の行事。同行二人の笠に金剛杖、数珠、鈴などを持ち白木の納札箱を胸に寺々を巡る。その遍路が長い列をなして虹の輪の真ん中を行くのである。下五の「虹の中」が美しい。風天俳句の秀句。「遍路」は春、「虹」は夏。」とある。  思い立って柴又帝釈天に行った。30数年振り、日曜日で混雑していた。映画は、ほぼ全部見ていて、その世界がそのまま残っているせいか、安心感があった。   「男はつらいよ」の最終作は、浅丘ルリ子(リリー)がマドンナで奄美大島が舞台だった。  渥美清は山頭火に傾倒していたという話もあるが、先の231句の中に、奄美を詠んだ句は見つからなかった。奄美に彼の句が落ちていないだろうか・・。 岩田治郎  2017.6.19

地域地球温暖化防止活動集

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  気ぜわしく、急ぎ足で時は過ぎる。飾り気のない執務室で2回目の正月を迎えた。  現在、全国に58か所の地域地球温暖化防止活動推進センターがあり、地域の活動拠点として様々な事業に取り組んでいる。昨年末、すべての地域センターの活動をわかりやすくまとめた活動集を作成した。全国各地の特徴的な事業やキーパーソンを紹介し、活動の幅広さを示すことができた。  実はこの活動集には、もう一つのねらいがあった。活動状況を可能な限り定量的に示すことだ。平成27年度ベースで、すべての地域センターの集計結果として、研修会等への参加者などの動員数が延べ約300万人。連携した団体数が延べ約1万団体。地球温暖化防止活動推進員の活動件数が延べ約15000件などとなった。活動による広がりを具体的に示すことができたのは大きな成果だった。  昨年、環境省の委託事業の中で、研修会等に参加した人は、1年間に0.14tのCO2を削減したと見なすことができるという試算を行った。この原単位に動員数300万人を掛けた「みなしCO2削減量」は約42万tと推計された。冒険的ではあったが、この数値も活動集に掲載した。  近年、普及啓発事業といえどもCO2削減効果を厳しく求められるため、毎年、定量的評価を行うことになるが、疑問は残る。5年ぐらいのスパンで波及効果など定性的評価も含めた総合評価を行いながら、国民の意識に確実に根付かせ低炭素行動に結びつけていくという普及啓発の本質からは、ずれていかないだろうか。気ぜわしく急ぎ足過ぎる。  初めてだったこともあり、活動集は好評で増刷した。 一般社団法人地球温暖化防止全国ネット専務理事 岩田治郎  2017.1.10

神楽坂・化け猫フェスティバル

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 神楽坂は、乃木坂・乃木神社、門前仲町・富岡八幡宮、護国寺、谷中銀座・夕やけだんだんとともに、東京の猫(野良猫)スポットになっている。「吾輩は猫である」で知られる夏目漱石のゆかりの地らしい。そこの商店街によって2010年から「化け猫フェスティバル」が開かれている。パンフレットには、「江戸時代から花街として文化を支え、猫と縁の深い街として猫好きの人にも猫にも愛されてきた。猫の街ならではのお祭りをという声から生まれたイベントとして、街と街の人、そして街に来る人、三位一体のまちおこしを目指しています。」とある。今年も10月16日に開催され、午後2時から化け猫パレードがあった。猫化粧した人々で道路はあふれかえっていた。子供、家族連れのほか若い女性も多い。外国人も目に付いた。  先日、NHKのニュースで小笠原のノネコ問題を取り上げていた。絶滅危惧種のアカガシラカラスバトはノネコの格好の獲物で一時期は激減したが、ノネコを捕獲し本土に送って順化後、飼い主探しを行う対策を進めた結果、被害が少なくなったとのこと。500匹以上のノネコが飼い猫になったらしい。飼い猫→野良猫→ノネコの経路を辿るので、環境が整えば効果的な対策である。一昨年、奄美大島生物多様性地域戦略の策定に関わったが、ノネコ対策は重点施策の一つとして位置付けられた。奄美大島5市町村が一体となって飼い猫適正管理条例を制定して対策に取り組まれている。詰まる所、住民に対する猫の飼い方教育しかないのである。鹿児島環境学研究会が進める社会科学的観点からの取組にも大いに期待している。  人と猫のほどよい共存はあるはずで、化け猫フェスティバルはその一端を示しているのではないか。猫が街おこしに一役買っているのである。 一般社団法人地球温暖化防止全国ネット専務理事 岩田治郎  2016.10.24

ルノワールの時代と地球温暖化

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ルノワールの時代展(名古屋ボストン美術館)     先日、たまたま泊まったホテルの向かいに名古屋ボストン美術館があった。「ルノワール の時代-近代ヨーロッパの光と影-」展をやっていた。目玉の作品はルノワールの「ブージヴァルのダンス」(1883)である。パンフレットには「ルノワールが生きた19世紀後半から20世紀初頭のヨーロッパは、産業革命により近代化が進んだ時代であり、人々の生活は劇的に変わりました。ガス灯が輝く通り、華やかな舞台の劇場-街は都市へと変貌し刺激的な場所となります。しかし急激な人口増加に見舞われた都市では生活環境が悪化し、貧富の差が生まれました。人々は都市に息苦しさを感じる一方、自然や素朴な暮らしの残る田舎にピクニックや海水浴などの憩いを求めるようになります。」とあった。ドガ、セザンヌ、モネ、ルノワールは、いずれも1840年前後に生まれ、近代化が急激に進む中、1870年代~1900年代初頭に活躍している。印象派の画家たちだ。  地球温暖化の話は、常に産業革命すなわち石炭(化石燃料)の燃焼が始まったことが起点になる。昨年公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次報告によると産業革命(1880年)から2012年の132年間に、世界の地表面の年平均気温は0.85℃上昇している。ちなみに、日本はこの100年間で1.14℃上昇している。ルノワールが活躍した20世紀前期の気温上昇は大きい。皮肉にも、中期の世界大戦の時期は停滞するが、平和が戻り産業活動などが活発になる20世紀後期から今世紀にかけて気温上昇が顕著になった。 世界の気候の変化(IPCC)  昨年12月、パリで気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が開催され、アメリカや中国を含むすべての国々が参加して産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えることを共通の目標とする「パリ協定」が締結された。世界が低炭素社会の構築に向け、京都議定書(1997)の時代からパリ協定(2015)の時代に移る歴史的転換点となった。今世紀末に温室効果ガス排出ゼロを目指すための社会構造イノベーションも提言されている。低炭素化への劇的変化に呼応して、またパリから新たな文化芸術が生まれ、第2のルノワールやセザンヌが生まれないだろうか。  一般社団法人地球温暖化防止全国ネット専務理事 岩田治郎  2...

「ウィルソンが見た鹿児島」in神保町

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東京堂書店・ウィルソン写真展示    屋久島の古居さんから東京堂書店神保町本店で彼女の近著「ウィルソンが見た鹿児島」のプロモーション中とのメールをいただいた。この書店は初めてだったが、選び抜かれた書籍が整然と分類され、2階にはカフェもあり、ゆっくり本を楽しめる雰囲気がとてもよかった。彼女の本は平積みされ、専用のコーナーにウィルソンの撮った写真が展示してあった。2017年には沖縄県立博物館、2019年には上野の国立科学博物館での企画展が計画されているとのこと。関東では彼が100年前に撮った写真が230点ほどあり、撮影地点を探し、同じアングルからの現在の写真と比較する作業に取り掛かったらしい。「何がどう変わったのか、変わらなかったのか、歴史的、民俗的、植物学的、環境学的、文化的観点から考察する作業にのめりこんでいます。」とメールにあった。大事業だ。  この書店は神保町すずらん通り沿いにあり職場から歩いて5分ぐらい。すぐ隣には小野寺 研究会行きつけの中華料理店がある。また、神保町シアターも近い。小劇場で主に昭和の邦画をシリーズで上映している。今は天知茂をやっていた。  書店の新古本コーナーに探していた小林信彦の「黒澤明という時代」ほか2冊が並べてあった。単行本が文庫並みの値段で一挙に手に入った。時々、覗くことにしよう。 一般社団法人地球温暖化防止全国ネット専務理事 岩田治郎  2016.6.30 神保町シアター

かごしま森のようちえん卒園式

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  毎年この季節になると元気な子供たちの卒園式に参加する。今年も3月17日にあった。土にもさわれない子が数日もすると森の中を走り回り目に見えて成長する。今年は5名が卒園した。活動を始めて9年、NPO法人になって4年が過ぎた。現在約20名が毎日通ってくる。吉野町の磯川沿いの斜面一帯約1000m2の広さの雑木林がフィールドだ。 かごしま森のようちえんフィールド  センス・オブ・ワンダー(感性を育むこと)が基本理念。今年も卒園証書を授与した。「あなたは雨の日も冬の寒い日も毎日森にかよい、たくさんの命とふれ、森の妖精とともに過ごしたことを証します。」森(自然)は厳しい時もあり、子どもたちは知らず知らずのうちに助け合うようになる。「生きる力は幼少期の自然体験と深く関わる」という報告があるが、感性を育むことは、どうやら優しさと強さを一緒に育むことに繋がる。9年の経験から得られた確信である。卒園児がどのような大人になっていくのか楽しみだ。  起業した市川女史をはじめスタッフの努力と保護者のご協力には頭が下がる。 一般社団法人地球温暖化防止全国ネット専務理事 岩田治郎  2016.4.6 卒業証書授与 卒園式会場 青空広場

全国地球温暖化防止活動推進センター

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  7月1日から職場が変わり新生活のリズムに慣れつつあるところ。  さて、地球温暖化対策推進法が制定されてから17年が過ぎたが、この法律の特徴の一つに地球温暖化防止活動推進員制度がある。住民理解を深める活動や指導助言などを行う。  現在、全国で約6000人(鹿児島県は約500人)が委嘱されている。また、知事等は自治体ごとに地域地球温暖化防止活動推進センターを指定することとなっている。鹿児島県では鹿児島県環境技術協会が指定されており、推進員などの活動支援のほか、日常生活における温室効果ガスの排出抑制に関する相談、助言。排出実態調査及び分析。県が行う対策への協力などを行っている。また、同時に同法には、環境大臣が全国で一か所、全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)を指定することとなっており、一般社団法人地球温暖化防止全国ネットが指定されている。私の新たな職場である。   同法人は全国55の地域センターが会員となって設立し今年5年目を迎える。理事5名、監事1名で役員を構成し、事務局は5グループに編成、職員は現在22名。  主な事業を挙げると  ・地域センターが実施する地球温暖化防止活動の技術的支援、指導及び助言  ・地球温暖化対策等に関する調査研究及び情報収集・提供  ・研修会や講演会開催などの普及啓発  ・地域センターにおける活動に関する情報交流の促進 などがある。  ちなみに、地域活動支援・連携促進事業(コンソーシアム事業、環境省)では、全国の地域センターが地域のNPOや関係団体、学校などと連携したCO2排出削減活動等への指導・支援を行っている。また、26年度から始まった家庭エコ診制度の事務局として、制度運営のほか国家資格の家庭エコ診断士資格試験業務を進めている。  今年で6回目を迎える「低炭素杯2016」は、全国のNPO,団体、学校、企業及び自治体が取り組んでいる地球温暖化防止活動のコンテストであり、毎年2月に開催される。年々参加者が増えるとともに、活動の質が向上している。鹿児島県からは、第1回大会(2011.2月)で出水市の六月田下集落の活動が準グランプリを受賞したことは、いまだに多くの人々の記憶に残っている。今年も準備作業が佳境に入っている。  事務所は神田神保町の隣町で三省堂神保町本店まで歩いて7,8分。...