照葉樹の森、一夜限りのレストラン

  先日(10月22日)、錦江町が鹿児島出身で大阪やパリにフレンチレストランを持つオーナーシェフと組んで「星空のレストランin花瀬」を開いた。同町の背後地、稲尾岳・木場岳一帯はシイ類、カシ類、クスノキなどが分布する西日本最大級の照葉樹森帯が広がっており、自然環境保全地域、天然記念物、森林生態系保護地域に指定されている。同町はこの照葉樹の森を活かした地域づくりに取り組んでおり、今回その一環として、照葉樹林の麓を流れる花瀬川の川床に広がる千畳敷の石畳(花瀬公園)に一夜限りのフレンチレストランが生まれた。

 景勝地散策のあと食事。アミューズ、冷・温のオードブル、スープ、魚料理、口直しのシャーベット、肉料理そしてデザート、紅茶コーヒーのコースであった。食材には錦江町産の秋茄子、マンゴー、椎茸、安納芋、キクラゲのほか地野菜。肉は錦江町特産の舞桜豚と鶏、魚は錦江湾産のヒラマサとカンパチなどを使い、とても上品な料理になっていた。さらに地元のブドウ農園で作られた花瀬ワイン、焼酎(魔王)、最後に地元産の深蒸し茶と団子もふるまわれた。

 本物の自然、本物の食材そして本物の料理が揃ったことで参加者は圧倒された。一人3万円の料金は決して安くはないが、県外からの参加はもとより、キャンセル待ちが出たというのもうなずけた。以前、鹿児島県観光のキャッチコピーが「本物。(マル)鹿児島」であったことを思い出した。地域にある多様な本物素材にどのような付加価値や物語性を付けて他者との持続可能な交流を図り地域おこしに繋げていくのか。錦江町長は来年も開きたいと言っておられた。試みは続く。

岩田治郎  2019.11.12

「星空のレストランin花瀬」(錦江町)