鹿児島に秋はあるか?

  鹿児島には「秋」がない。鹿大にきて十数年、感じ続けていることである。「春」は確かにある。桜が咲くから。東京大阪より開花が遅いこともあり、四月、常夏の国から降り立つ留学生達を桜が迎えてくれる。しかし、とにかく「秋」がない。11月中旬の大学祭まで、学生はビーチサンダルに半袖Tシャツ、酔っ払った勢いで寝てしまっても、風邪を引くことはあっても凍死することはない^^;なのに12月上旬に街ゆく人達は、コート姿である。

 そういえば、鹿大での最初の勤務地長島には「秋」があったような気がする。それまでの人生で一番積雪に見舞われたのも長島であった。何で鹿児島に来て雪に降られにゃならんのか?と思って空を見上げれば、どよ〜んと曇り空。これは、関西では日本海側の冬の天気である。瀬戸内側が空っ風吹く晴天(これはこれで寒々しいのだが)であるのに対して、あつ〜い雲に覆われ、海は荒れ気味。「ナルホド。東シナ海って、結局日本海の南の端なのね」と納得した。北薩地方に「秋」があるのは、単純に景観の問題、つまり、紅葉がみられるか、落葉樹か常緑樹かという問題だろうと思う。樹木の分布は気温で決まる部分が大きいだろうから、それだけ気温が違うのだろう。

 ところが、今年は鹿児島にも「秋」が来たような気がするのだ。10月に一度気温が下がり、11月上旬まで本当に寒かった。急に秋服が必要になったりして・・・その後、再び気温は上昇、夏日まで出る始末。今日も学生達は半袖Tシャツである^^;

生活の中で感じるこういう変化がデータとして残るのか、ちょっと調べてみた。つまり、

・北薩と鹿児島市内では秋の気温が違う

・今年は昨年と秋の気温変化が違う

と言う状況が、気象庁の気温データで読み取れるかどうかである。

図1 西日本各地における日平均気温の月平均(2011年):気象庁HP

 図1は日平均気温を月ごとに平均した値の季節変化を見たもの。紅葉が有名な京都を比較対象にしてみた。欠損値がない年を探していたら、2011年までさかのぼることになってしまった。紫の鹿児島と緑の阿久根で違うところと言えば、9月から10月の気温の落ち込みだろうか。夏の気温というのは、名瀬も京都もあまり変わりが無く、阿久根など京都や熊本より涼しいぐらいだ。9月の気温も比較的似通っているが、10月の平均気温が20度を下回るかどうかが大きな違いだろう。

 熊本の冬は京都並みに寒いとか、九州では2月と3月の気温にほとんど違いがないなど、意外な発見があった。関西にいると2月上旬が一番寒く感じられるし、国立大学の個別入試の頃(2月下旬)によく雪が降って大騒ぎになるのだが、こちらでは2月はもう春なのだ。

図2 鹿児島市における9月~11月の日平均気温の変化(2013年と2014年):気象庁HP

 今年に限って鹿児島に秋があったのかどうかは、この10月の気温を見るべきだろう。9月中旬から10月にかけて周期的に気温が低い時期があり、これを私は「秋が来た」と感じたらしい。しかし、面白いというか恐ろしいのはその後の気温変化である。11月下旬現在の気温は、昨年より10℃近く高いのだ。通常なら平均気温が10℃を下回る日もあるはずの季節になったかと思うと、それはそれで気が滅入る。このまま暖かく12月を迎えることができれば、エアコンに使う電気代が随分助かるに違いない。とは言え、10℃も違うとは、不安である。

山本智子 2014.12.1