岡山市とESD

  10月9日から12日まで、岡山市で開催された「ESD推進のための公民館-CLC国際会議~地域で学び、共につくる持続可能な社会」に参加してきた。29カ国650人以上が集い、「岡山コミットメント(約束)2014」を英語、日本語の両言語で採択した。約束文は、会議の背景や当日の様子(U-stream)などとあわせて、http://www.kominkan-clc.jp/ で確認できる。

 約束文は、「誰もが排除されない持続可能な社会を築くため、教育の在りようを見直すときには、コミュニティに根ざした学びにこそ、要となる役割が与えられるべきである。」と謳い、公民館やコミュニティ・ラーニング・センター(地域学習センター)など、学校教育以外の教育の領域、教育の機会の重要性を説く。


岡山市は、世界的にも珍しく市を上げてESDに取り組んだ。
会議期間は街全体がESD一色だった。
果たして岡山市民の理解と反応は…

 この規模の国際会議の日本開催は、私が専門にする環境教育・社会教育の世界では珍しい。そればかりでなく、参加者全員で約束文を作り上げていく過程も特異であった。2日目の分科会「環境保全」に私もファシリテーターとして参加したが、出席者の経験に基づく共通の思いや願いが、最終的に約束文書に盛り込まれることになった。

分科会が開催された藤田公民館は、干拓地で水不足と塩害の闘いの歴史をもつ。

全体会場に戻り、7つの分科会の成果報告を一つにまとめる作業。

 

 Education for Sustainable Developmentの頭文字をとってESD(イー・エス・ディ)。当時まだ院生だった私は、NGOの一員として2002年のヨハネスブルグサミット(持続可能な開発のための世界首脳会議)で、その後2005年に開始された「国連持続可能な開発のための教育の10年」の提案を推進する立場にあった。

 あれから10年、最終年を迎え、11月には当キャンペーンの提案国である日本政府がユネスコと「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議」を共催する。それに先駆けて開かれた今回の国際会議、メインプログラムの裏側では、全国から90以上の自治体が「公民館等を中心とした社会教育活性化支援プログラム」の中間報告会(文科省主催)に参集していた。

世界から集まった国際会議の参加者(本会場)

全国から集められた自治体職員の社会教育活性化支援事業の中間報告会(本会場4階)

 ひるがえって「鹿児島環境学宣言」は、環境問題の解決の手掛かりは机上ではなく現場にあり、現場でのねばり強い作業にこそ解決の道筋があると宣言する。今回岡山市で採択された約束文は、私たちが歩み続ける上で一考に値するように思う。

小栗有子 2014.10.27