喜界島

 喜界島は鹿児島県奄美群島にある隆起サンゴ礁の島である。世界的にみても類を見ない速度で隆起をしている島で、年間平均2mm程度の速度で隆起している。私は十数年前からたまにこの島を訪れているが、隆起の速度に反して、島での生活速度はゆったりとしていて、俊寛和尚も流されてきたという伝説もあり、個人的にはなんとなく気になる島の一つである。そんなことを友人たちに話をすると、意外に喜界島を気に入っているという人が何人かいて、そのメンバーと今後の共同研究の方向を考えるために、喜界島をこの夏に訪れた。

  私の専門は貝類の生態であるが、この地域では他であまり見られない食の習慣がある。それはヒザラガイをクンマーと呼び、主に酒のさかなとして食べる習慣である。クンマーは沿岸域の岩の隙間に住んでいるのだが、主に夜の潮が引き始めた時にクンマーは食事のため隙間から這い出して来る。そのとき、人々は海岸に出て、クンマーを採集する。その採集されたクンマーを圧力釜で調理し、貝殻を取り除いた後、酢味噌で食べると、やめられない味になるらしい。

 喜界島には集落ごとに六月燈がある。知人の集落は7月14日に六月燈が有ったのだが残念ながらその日には鹿児島市内に帰らなくてはいけないため、前日の練習に参加した。50-60名近くの人が集落の中心の広場に集まり、練習をしている。1曲ごとに振付けられた踊りを、全15曲を他の人をまねながら踊った。あまりの多様な曲と踊りに翻弄され続けた。時間はゆっくり過ぎながらも、世界で類を見ない速度で景観が変化している島で、多様な文化を味合うのは、なんとも不思議な感じで楽しい。

河合渓 2014.7.23


調理されたクンマー

六月燈の踊りの練習風景