枕崎のしゅん(旬&春)をいただく!

 3月30日土曜日に枕崎のNPO法人自然花が主催する「野草摘み&天ぷら作り体験」に参加した。

 まずは,講師を務める地元農家の山崎巳代治さんを先頭に,20名の参加者全員で集落を回り,天ぷらにする食材さがしからスタート!

ほりたてのタケノコを刺身用にカットする。
地上に顔を出していない段階のタケノコしか刺身用には適さず,
そうしたものを見つけるのはまさに    山崎さんの達人の技である。

山椒を混ぜた酢味噌をつけていただく。
若干の青臭さはあるが,日頃口にしているタケノコとは
全く異なる柔らかい食感にしばし酔う。

 山崎さんが真っ先に案内してくださったのは,たくさんのワラビがにょきにょきと伸びている場所-。

 「ここにもある,あっちにも。」と,皆が歓声を上げながらワラビを摘み取る。

ワラビの群生地!!

あっと言う間に,食べ切れないほどの量が収穫できる。
天ぷらにしたワラビは,意外にもしっとりとした粘性がある。

 ワラビ採集後は,全員で集落内の道を歩きながら,山崎さんから,そこかしこにある食べられる野草の説明を聞き,籠の中に集めていく。

 その中には,ヨモギやノビルなど,これまで目にしたことのある野草もいくつかあるが,スイバにアケビの花,カラスノエンドウにスズメノエンドウ,アシタバ,クコなど,初めてその名を聞き,または初めて目にするものもたくさんある。

 枕崎の山里の豊かさに改めて驚かされる。

左から,ワラビ,スイバ,ヨモギ

左側の大きいのがカラスノエンドウ,
右側の小さいのがスズメノエンドウ。ネーミングもユニークだ!!

今回は見るだけだったアザミの根っこ!
この根っこの漬け物が「ヤマゴボウの漬け物」として
昔から食べられているとのこと。

アケビの花。大きいのが雌花で,小さいのが雄花。
天ぷらにして,細い茎は残し,花だけをいただいたが,甘くておいしかった。
昔から実だけでなく,花も食べられてきたなんて,何とも風流な話だ!

トゲのない栽培用のタラの芽。

鋭いトゲのある天然物のタラの芽

カゴ一杯に収穫した山里からのいただきもの。

下ごしらえを済ませ,調理の準備が整った野草など。
見るからにおいしそうだ!!

 こうして集めた野草と,山崎さんがあらかじめ用意してくださったタラの芽やタケノコ,シイタケ,ラッキョウ,新タマネギ,ソラマメなど,全部で15種類の旬の食材の下ごしらえを全員で行い,天ぷら作りの準備をする。

  これまで全く知らなかったが,自然界のタラには鋭いトゲがたくさんあるのに対し,栽培されているタラにはこのトゲがないとのこと(天然物でもトゲがないものもあるらしい)。

 下ごしらえの際に,厳しい自然界で生きていくための武器であるこのトゲが手に刺さり,悲鳴を上げるほどの痛みを体験したが,やはりトゲに守られた天然物の方が味が濃いそうだ。

  準備ができたところで,NPOのメンバーが揚げてくださる,アツアツの天ぷらを味わったが,まさに旬の食材!!

  素朴だが,それぞれの個性的な味わいに全員が舌鼓を打った。

野生のネギとも言えるノビルは,
葉の部分を根の方にぐるぐる巻きにして揚げる。
調理方法のそこかしこにも伝統的な技が隠されている。

NPO法人のメンバーが揚げてくれる天ぷらを,
まさに親鳥から餌をもらう雛たちのように次々といただく。

おいしそうに揚がったタラの芽,ソラマメ,ノビル,シイタケ,タケノコなど。

こちらはシイタケ,アケビの花,タケノコ,クコ

薩摩半島南部の郷土料理「茶節」で口休め~。
鰹節と味噌にお湯かお茶を加えて混ぜ合わせたシンプルなもので,
好みでネギやショウガを混ぜていただく。
私にとっては,これまた初体験の料理。


昨年の12月に「和食(日本人の伝統的な食文化)」がユネスコ無形文化遺産に登録された。登録されるに至った和食の特徴として,

①多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重,

②栄養バランスに優れた健康的な食生活,

③自然の美しさや季節の移ろいの表現,

④正月などの年中行事との密接な関わり

が挙げられているが,高級食材を使ったきらびやかな料理ではなく,今回私たちが楽しませてもらったような,季節の野草などをいただく素朴な料理こそが,我が国の伝統的な「和食」ではなかろうか。

 一見何もないような山里が,実はどこよりも豊かな場所であることを再認識した体験だった。

有村智明 2014.4.14