薩摩塔シンポジウム

 3月15日(土)長崎県平戸市北部公民館で開催された「中国・寧波産石材の拡散 異文化?の記憶 − 薩摩塔・碇石・宋風狛犬と東シナ海世界 ―」という長い題名のシンポジウムに参加してきました。薩摩塔研究に非常に大きな貢献をされた大石一久先生(長崎歴史文化博物館)の主催です。

  薩摩塔とは、鹿児島県で昭和30年代に発見された珍しい石塔で、九州の西側、鹿児島県、長崎県、佐賀県、福岡県にのみ40数基程度が分布しています。一般に日本で見られる石塔とは大きく異なっており、製作者、製作地、製作意図、製作年代ともに不明の謎の石塔でした。今回のシンポジウムで、これまでの研究成果についての発表があり、研究の進展が明確になりました。

  薩摩塔研究は、この5年間で一気に進みました。(1)新たな薩摩塔の発見(総数は一挙に二倍)、(2)福岡県の中世遺跡である首羅山遺跡との関連の指摘、(3)薩摩塔の石材が中国浙江省の石材であることの指摘と科学的証明(鹿児島大学の高津孝、大木公彦が関わっています)。

  現在では、薩摩塔は、ほぼ13世紀から14世紀にかけて製作され、中国商人達と関係が深い塔であると推定されています。中国では宋・元王朝、日本では鎌倉時代になります。

  薩摩塔は特に鹿児島中世の歴史にとって意味が大きいものです。平戸や長崎など北部九州が中国との貿易で栄えたことは良く知られていますが、中世の鹿児島にも中国から海商(商人集団)がやって来て盛んな交流が行われたことを示すものとなっているのです。

高津孝 2014.3.25


図版1 水元神社薩摩塔(南九州市川辺町)

図版2 薩摩塔類分布図

図版3 浙江石材と中世日本