モロッコと環境教育

 6月上旬、モロッコに行った。2年に1回開催される国際環境教育会議(World Environmental Education Congress)に出席するためだった。環境教育研究の世界はまだ若く、国際学会というものはまだ設立されていない。それに代わるのがこの会議だろうか。


訪問したマラケシュ都市郊外。 水や緑のない台地が延々つづく。ヤギ飼いをよく見かけた

緑は植林したユーカリかオリーブの木。 こちらは良質のオイルがとれるアルガンの木

 あまり知られていないが、世界の環境教育のムーブメントを作るきっかけは、1975年に世界の環境教育専門家が集まって起草したベオグラード憲章にさかのぼる。そして同年、京都で日本学術会議の主催でInternational Congress on the Human Environmentが開催され、分科会Information and Education on the Environmentにおいて、日本の公害教育実践が初めて世界に紹介され、海外の研究者を驚嘆させた。

日本では絶滅のコウノトリも モロッコでは街の城壁のあちこちに巣づくりをしていた

アルガンの木実の皮をむいて臼で挽くと油がとれる。 寡婦を中心に組合をつくって製造販売に力を入れていた

 それから実に40年が過ぎ、環境教育の勢力図はずいぶん変わったように思う。契機は、国連機関のユネスコが環境教育の主導をとるようになってからだろうか。2003年に立ちあがった本会議は、欧米を中心とした「主流」環境教育を取り込みながら、中南米や地中海の国が主導権を握っているのが面白い。

円すい形の「土鍋」タジンで煮込んだ料理は スパイスが利いて乾燥した暑い国ならではのもの。おいしくてはまった

夜な夜な夕食(お酒はない)に通った世界文化遺産のフス広場。 店開きは、暑さがひと段落した16時から。人、音楽、食、工芸品で熱気がすごい

今回最後の全体会でインドの有名な環境保護運動家のバンダナ・シバが講演に訪れ、真っ向からアメリカやイギリスを名指しで批判し、ブラジルからきた教授が、環境教育は政治教育であると断じていた。第7回目にして初めてイスラム教国で開催したのも本会議事務局の強い思いがあって実現した。

主催者発表では会議参加者は1200人。 その中に地元の子どもたちも多く含まれている。

会議には、ノーベル平和賞を受賞したマータイさんの娘さんも駆けつけた。


小栗有子 2013.6.26