見えない世界の生物たち

  海辺を歩くのが好きだ。ただ誰も歩いていない砂浜を色々と空想しながら歩くのは楽しい。岩礁に生息する生き物たちを見ながら、石を除いたらカニ達が驚いて駆け出す。カニ達と追いかけっこをするのもタイドプールの魚たちを観察するのも楽しい。 

 砂浜を歩く楽しみの一つに、美しい貝殻を探すことがある。大きく殻の欠けていない貝殻を見つけたときは嬉しいものだ。しかし、最近になり多くの人たちから、「貝殻が少なくなった」という話を聞く。多くの人たちが貝殻拾いを趣味にして、私たちが拾いに行く前に採集してしまっているのだろうか。どうやらそうでもないようだ。

 多くの貝殻が海水に覆われた海底から運ばれてくる。そこは海の中であるため、私たちには現実にそこで何が起こっているかはわからない。そのため、なぜ貝の数が減ったのかという原因を明確に説明することは難しい。考えられる原因は、例えば、海砂の採集、ダムでせき止められたれ砂が海に流入しないこと、逆に赤土などの流入、海洋汚染、気候変動、移入種による影響などが考えられ、これらにより貝にとっての生息空間が悪化しているのかもしれない。

 小さな貝たちも生きていくことに苦労をしている。海を見ながらその見えない海の底で何が起こっているかを想像してみると面白いかもしれない。そして、色々な人が色々な想像すれば見えない世界も身近になり、小さな貝の世界も少しは改善するかもしれない。

河合渓 2013.5.30

打ち上げられた貝殻