徳之島見聞録2 闘牛・崎原集落編

 11月にお世話になる、徳之島屈指の闘牛士、基山初男さん宅を訪ねた。基山家は、祖父の時代から3代続く、全島一横綱(重量無制限の闘牛チャンピオン)を育て上げた名家。徳之島の闘牛は有名だが、大きな大会は年3回。横綱3代の血統で育て上げた基山大宝は、3000人規模の観客を前に、ひと睨みで相手の牛を追い払う凄みを備える。初男さんの話によると、闘いをするたびに迫力が増してきたのだとか。

基山さんのお宅の仏間には、親子三代の優勝旗やトロフィーが所せましと並ぶ。

すぐ隣に住む得岡誠二郎さん(85歳)が、
基山大宝が優勝するたびに、直筆で短歌を送り続けている。

 基山家のある崎原(さきばる)集落は開拓の村。わずか40~50戸だが、町内で農業生産は一位、教育長は3人輩出してきたという。日々の労働の延長に、なぐさみとして闘牛が行われてきた。今のような形で闘牛が持たれる様になったのは昭和28年で、祖父の時代からだという。

 初男さん自身もそうだが、生まれた時から牛がいる。そこには到底語りつくせない、牛との思い出、家族との思い出、地域との思い出がぎっしり詰まっている。闘牛は、今でも子どもたちの憧れで、遊びはもっぱら闘牛ごっこ。

 若者の自分探しが語られて久しいが、徳之島の強さは、すぐ身近なところに夢とロマンがある。そしてそれを実現させてきた大人が身近にいる。

 ただ一方で、昭和56年頃までは、崎原集落にも闘牛が50~60頭がいたが、今は戸数にするとわずか3戸。後継者も少なくなってきているという。徳之島の闘牛文化を今後どのように受け継ぐのか。そんな岐路に立っていることを知った。

初夫さんに得岡誠二郎を紹介してもらった。
現役教員時代は、闘牛には全く興味がなかったが、基山大宝と出会って一転。
闘牛は人の心を動かす。貴重な自伝を頂戴した。

子どもたちに大人気の基山大宝のタオル。
200枚用意するがあっという間になくなってしまうそうだ。
下は、オリジナルの基山大宝のポスター

小栗有子 2012.10.2